一人の女官は恋をした【短編、諸説あり】
「…お前の気持ちは知っていた。わかっていた上で、見合い話を麗の父上に持ち込んだのだ
…身元と人柄は保証しよう。決して悪いやつではない。
また、彼の昇格も手配して置いた。
いづれ宮殿に出入りするぐらいの位になるだろう」
「そんなっ…」
思いを知られていただけでなく、彼はわたしに見合い話を持ち込んだのだ。
(厄介払いなの?そうなの?)
拒絶された方がまだよい。
返事をもらうことはおろか、思いを打ち明けることも許されず。
あろうことか相手を宛がわれたのだ。
「…麗…」
涙が麗の頬を伝う。
愛らしい相貌が、涙に歪んだ。
「…っ……ぅうっ…」
しきりに拭うが、止まることはない。
「……」
途方もない罪悪感が、日子を襲った。
(…まさか)
まさか、ここまでの思いだったとは。
身分が目当てか、皇子なのが目当てなのか。
そう思っていたのに、まさか本気で。
(…私のような忌み子を愛すとは…)
唇を噛む。
そして、行動に移った。