一人の女官は恋をした【短編、諸説あり】
「ひ、るこさま…?」
華奢な体。
装飾品の少ない頭部。
細い腰。
それらを腕の中に閉じ込めた。
麗を抱き締めたのだ。
「…ひ、」
「…私はね、本当にお前が大事なのだよ。
恋愛感情ではないのが申し訳ないが、大事な人なのは本当だ。
なんせ、私を心配してくれるのは宮殿内で麗しかいないのだ」
――皆、彼の存在を知らない
とうの昔に死んだとされ、日の目を見ることすら許されない。
『すまない。
わたしはお前を手放したくはなかったのだが…』
『いいえ、私は気にしてませんわ
ねぇ?日子――』
…たった一人の片割れは一人で流された。
7歳には重すぎる、計り知れない絶望感。
そんな中、自分と同じ年代の彼女――麗が現れた。
質素な彼女は彼によく尽くし、想ってもくれた。
そんな彼女を疎かにできるものか。