一人の女官は恋をした【短編、諸説あり】
日子の彼女への思いは、家族愛なのかもしれない。
しかし、大事なのだ。
話を言えば返してくれる。
自分のことを心配してくれる。
たったそれだけをしてくれる彼女が。
大事だから、だから。
「幸せになってくれっ…」
地獄のような宮殿ではなく。
自殺行為の反逆者になるのではなく。
ただ、家庭をもち、普通の幸せを与えてやりたい。
そう思うのは、願うのは。
彼女にとっては酷なことなのだろうか。
「日子さまっ…置いていかないで、側にいさせて下さいっ…」
耳元で、そう囁く彼女。
「私は忌み子だ。私の側にいれば、麗はいつか必ず後悔する。
そうさせたくはない…大事なのだよ、麗が。私は…」
「…日子さま…」
ぐずんと、鼻水をすする声。