一人の女官は恋をした【短編、諸説あり】
「大王、それは」
少年が口を挟もうとするが、王が手で制す。
「麗。今まで宮殿の奥でこいつの面倒をみさせてすまなかった
でもそれももう、終わりなのだ」
「お、終わりでございますか?」
「ああ。
本日、こ奴を私の側近に仕えさせる事が決まった。
晴れて自由の身だ、日子(ヒルコ)よ」
「…それは、どういう意味ですか」
訝しげに少年が、否、日子が聞く。
17年間、存在を認められず、彼はずっと閉じ込められていたのだ。
いきなりのことに戸惑うのは当然である。
「私を、王の子だと認めると?」
「いや、そうではない。他人として現れて欲しいのだよ」
「他人として?」
「ああ――徐福と名を改めてな」