一人の女官は恋をした【短編、諸説あり】

◇◇◇



「ねぇ、聞いた?」


女官仲間の傀(カイ)が、麗に話しかけてきた。

最近こちらに移動した彼女になにかと構ってくる傀は、噂好きで有名だ。

宮殿に仕えたのも、政治家たちに見初められる事が狙いである。らしい。


「なに?どうしたの?」


「また当たったらしいのよ!徐福さま!」


ピクンと、麗は見ていた書物から顔を上げる。

読んでいた庶務の簿記より、そちらの話題の方が気になったのだ。


「当たった…?」


「ほら、この間戦争の吉凶の占いを大王さまが直々に命じられたでしょう?

あれ、当たったらしいのよ。

南の城から取れって話だからその通りにしたら、南の城の手薄なこと手薄なこと!
一気に4つも取ったらしいわ!」

「よ、4つも?」


「5つ目を取ったら引けと徐福さまが仰ったから、その通りにしたらしいの。
そしたらね、6つ目の城には敵国の最強と呼ばれる…なんだったかしら。
まあ、武将が待ち構えてたんですって。

6つ目行ってたら、軍は全滅していたかもしれないって話よ!」


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