一人の女官は恋をした【短編、諸説あり】
麗はこの一年徐福の心配ばかりをしている。
倒れたと聞けば血相を変えて王に伝書を飛ばし、体調の様態を伺った。
宮殿内で見かければ、少し痩せたのではないかと以前を思い浮かべた。
情はそうそう消えるものではない。
丸々10年仕えた訳ではないが、彼の胸のうちを知る麗にとって、彼は並々ならぬ存在だったのだ。
また、それは徐福もしかりであった。
(あ……)
麗は宮殿内にある寮で、伝書を受け取る。
部屋の中の両親からのもの以外のそれは、徐福からのものであった。
暗号化されており、宛名は特定されないようになっている。
「…」
内容は、『以前と変わりはないか』というだけのものだった。
心配されているという事実に、思わず胸が暖かくなる。
だが、すぐにそれは消えた。
彼の思いは女官としてであって、決して女としてではない。
麗は徐福に淡い恋をしていたのだ。
決して叶いはしないのはわかってる。
理由は身分だけではない
彼の思いはいつだって、別のひとに在るのだから。