うちに動物が来た
「行っちゃやだ、」

「翼、ねぇ…どうしたら離してくれ る?」


「葵が側に居ないと寂しい…」

すん、と首元に鼻を持って来て空気を 吸い込む…というよりは匂いを嗅がれ ている様な気もするけど。 ぴとりと冷たい柔らかいものがちゅ、 と音を立てて首筋に触れた。

ぎゅう、と力が強まる。

「翼っ…」

「やだやだっ」

「いい子で待ってたら何でもしてあげ るから」

「…じゃあ帰るっ」

「いい子」

するりと翼から開放され振り向く。 頭を優しく撫で、見えない様にネコの 姿で帰りなと促す。

寂しがりやで甘えん坊な猫も、悪 くないかもしれない。 まだのんきにそんな事を考えていた。

「おかえり」

「ただいまー、」

「ちょっと葵!!さっきの彼と一体どう いう関係よ!!」

「どういうも何も…今家に遊びに来て る従兄弟だよ」

従兄弟?と目を丸くする彼女達にうん と頷く。

…まぁ嘘なわけだけど。 お父さんを心配させない為につき続け た嘘の技術がこんな所で使えたとは。 何でも、翼が人と動物の間の生物と いうのは明かしてはいけないそうだ。

たった二人の小さな秘密。
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