うちに動物が来た
「ただいまー、」


シン…


私が帰ってくると、いつも玄関まで飛んでくる翼が来なかった。 それにまるで家が静かだ。 リビングに行っても翼の姿は見当たら ない。

…もしかしたら、帰ってしまったのか も。

そんなの何時か来ると分かっていたの に、ズキンと心が痛む。

「っ…つば、さ…」

ぼろぼろと涙が頬を伝う。 やっと生活が楽しくなってきたのに、 やっぱり、3ヶ月は短いよ…

頑張って涙を止めようと掌で目元を押 さえても、涙は次から次へと流れ落ち る。

ふと、気配を感じた。

「葵っ…!!!!」

ぎゅっと抱きしめられた。 温かい腕、大好きな声、苦しいくらいに抱きしめられて嬉しくて、また涙が溢れた。

翼が帰ってきた、それだけで嬉しかっ た。 帰るの遅くなっちまってごめん…そう 謝ると、翼は頭を肩口に埋めてもっと 抱きしめる力を強めた。

「…な、泣くなって」

「怖かった…翼が、居なくなっちゃっ たと思って…」

「ごめんな…大丈夫、葵は一人じゃな いから、」

振り向かせた私を覗き込む様に翼が屈 む。 また涙が溢れて、もう止まらなくて、 さっきと違って優しく抱きしめてくれ る翼に何も言えなくなって、

やっぱり私は翼が好きだ。 でもやっぱり、私は翼に恋をしなかった方が良かったと思う。 私達は、いつか離れる身なのだから。
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