うちに動物が来た
ついに、お別れの日。
葵が居ない日中に、向こうの世界に帰ろうと思ってる。 だってきっと、葵が居れば、泣いちゃうから。

だから満面の笑みで。

「葵、いってらっしゃい!!」

「うん、いい子でお留守番しててね」

「じゃあな!!!」

葵を見送る。

これでお別れ、葵と会うのは向こうの世界で功績を残してから。 すぐ帰って来れる保証は無い。

さぁ、準備をしなければ。

「翼さん、初めましてですね、お迎えにあがりました」

「はや!?ちょ、待って待ってまだする事あるからさ、その辺座っててくん ね?」

「待ってます」

あの日買ったネックレスが入った袋 を、用意しておいた便箋に添えてダイニングテーブルに置く。 最後にここの家の鍵を持って、リビングに戻る。

にしても誰だこいつ。

「あのー、すいません誰ですか」

「え?あぁ…帰界してくる方が世界の間で迷わない為のただの案内人です」

「別に一人でも帰れるんだけど」

「…私には人間界に愛する者が居まし た、ですが世界の間で迷い帰れなくなった。彼女はきっと泣いている、とても泣き虫だったから。 そんな彼女に会わせる顔がない、だから私と同じ思いをしない様に案内人として働いているのです」

世界の間で迷う…何だかピンとこない が。 目の前の男は目線を下げ自嘲気味に笑うと、用意は出来ましたか?と聞いて きた。 名残惜しくテーブルに触れた後、グ ルッと部屋を見渡す。

3ヶ月間、ありがとう。

「じゃあな、葵」

2_ _ _年_月_日 人間界から一匹の“魔獣”が消えた。
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