うちに動物が来た
暫くして、お姉ちゃんも学校に行った。
残された俺と美緒、美緒は特に何も言わずお絵描きをしていた。
義務教育を受けさせる年齢の少女を家に置き去りにして、今まで何をさせていたんだ。

そう思いつつぼうっと美緒を見つめていると、徐(おもむろ)に教科書とノートを取り出した。



「…ここで、勉強すんの?」

「うん、がっこうには行けないから」

「学校に行けない…?」



少女の発言に首を傾げる。
何を言っているんだ、過保護すぎて親が出してくれないとか…?
いや、申し訳なさそうに美緒を見ていた両親の態度からしてそれは無いか。

だとしたら、俺の考えが正しければ…



「美緒ね、お家から出られないの」




無造作に床につけられた小さな手をぎゅっと握る。
今にも泣き出しそうで、壊れてしまいそうな少女は小さいながらに大人よりも我慢をしていた。

少女の足元に置かれたお絵かき帳には、窓から見える景色が描かれていた。
少女の小さな夢は、叶う事はないのか。



「どうして、外に出れないの?」

「…おひさまが苦手なの、やかれちゃうんだよ」



まるで雪の様に白い肌は、そういう事だったのか。

この少女は熱とか、日光に弱い。
生まれつき、皮膚が弱いんだと思う。
冷えた手足の先もそれで説明がいく。

学校に行けないのも、外に出れないのも、美緒のその病気はきっと重度なものなのだと思う。

そんな少女を、守りたいと思った。

何が出来るか分からない。
だけど美緒の為に、何かしてやりたい。
< 31 / 50 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop