うちに動物が来た
「…美緒は外に出たいの?」

「うん、お外の、見たこともないところに行きたい!」

「…俺がいつか、連れてってあげる」



勿論、俺にとって人間界なんて端から端まで見たことのない世界だが。
それでもきっと、俺の人間界への憧れと美緒の外への憧れは同じだと思った。
きっと俺たちは似た者同士。

ぎゅっと、小さな身体を抱きしめた。



「はすくん?」

「…心臓、落ち着かないね」

「?心?」

「そう、心。どきどきいってるよ」

「はすくんがやさしいからだよ」




少し速い鼓動が聞こえてくる。
小さな手が背中に回り、ぎゅっと抱きしめてきた。

手も少し震えている様に感じる。
こんな無垢な少女が、どうして傷つかなければならないんだ。
可哀想だと、世界は理不尽だと思った。



「美緒、顔上げて」

「ん?」

「怖がらなくて良いから、美緒は一人じゃないよ」



何か小さな黒い思いが心に広がった。
そっと小さな頬を包む。

静かな部屋、ちゅ、と小さな音が響く。
少女の小さく柔らかな唇と、俺の唇が触れ合い音を出した。

1秒も満たなかった短いキス。
初めてのキスは、小さな少女の唇に捧げた。



「は、…はすくんっ?////」

「おまじない、美緒が外に出れる様に」

「き、きすっていうのは、すきあってるひとがするってままがっ…!!///」

「…俺は美緒が好きだけど、美緒は俺のこと嫌いなの?」



すきだよ、と小さい声で頬を赤くしながら美緒が呟いた。

美緒の心からの笑顔を、俺は見たいと思った。
< 32 / 50 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop