うちに動物が来た
「はーすくんっあーそーぼ!!」

「美緒、もう大丈夫なの?」

「だいじょーぶっ!!」



熱も治まり退院出来た美緒は、また以前と同じく俺に抱きついてきた。
少女の笑顔はどうも作り物っぽい気がしてならなくて、あまり見たくはない。
何だか、気を遣わせてしまってるみたいで。

淡いピンクのワンピースに水色の厚手のポンチョを着た少女は擦り寄ってくる。
艶々した黒髪を撫でた。



「美緒、美緒は…最近、母さんの事どう思う?」

「??」

「ううん、何でもない」



最近、母さんと父さんの様子が可笑しい。
美緒が入院した後から、ずっとだ。

嫌な予感しかしなくて、不安そうに俺を見上げる少女を落ち着かせる様に強く抱きしめた。
あぁもうなんで、こんなに美緒の事考えてるんだ。
俺は、何考えて…



「はすくん…?」

「…大丈夫、美緒は俺が守るから」

「?じゃあ、はすくんは美緒が守る!!」

「…そっか」



少女の笑顔を、本当の笑顔を見るためにも、俺は美緒を守る必要がある。
好きなんだろうな、美緒の事。

例え人じゃなくても、この少女を守るだけの力が欲しい。
例え人じゃなくても、この少女を好きになってしまった。
報われない想いは、胸に秘めよう。

…それでも、大好きなんだ。
< 38 / 50 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop