うちに動物が来た
「いい加減にして頂戴!!何度言えば分かるのよ!!」

「何で分からないんだ!!美緒にははすが必要なんだ!!」

「今の家計を見て言いなさいよ!!この間の入院費でお金が無いの!!」

「稼いでいるだろう!!」



今日もまた、何度聞いただろうかこの怒鳴り合い。
毎日の様に母さんと父さんは喧嘩していて、いつも一人で寝てるお姉ちゃんも美緒の部屋に来て俺と美緒と三人で寝ている。

二人の喧嘩の原因は俺、だから一つ考えがあった。
もう二月も中旬、あと一週間とちょっともすれば俺は向こうの世界に帰らなければいけない。
美緒やお姉ちゃんが嫌な思いをしない様に、早めに帰るかと考えている。



「ごめんね美緒、お姉ちゃん、」



一旦向こうの世界に帰って手続きをしなければ。
さっさと帰ってさっさと戻ってこよう。



---



「うわ、懐かしい」

「…はすさんやないですか」

「とわさん」



振り向くと黒い着物に青いマフラーを巻いた狐耳の眼鏡の少年が立っていた。
ふさふさした太い尻尾を揺らしこちらを見る表情は暗くてよく見えない。

とわこさん、昔からちょいちょいからかわれた人物である。
よくゲスとうるさいの二人と喋ってる訛りのある人、人っていうか…うーん、人っぽい人。



「期間はまだなんやありませんでした?」

「…ちょっと問題があって、早めに帰ろうかと」

「あれ、はす君!?もう帰ってきたの!?」

「うわっちょっ翼君!!やめろよ暑苦しい!!」

「いやー、寒いべその格好」



そういえば、かなり薄着なのを忘れていた。
まぁどうせすぐ帰るから、再会に浸っている場合ではない。

手続きを済まし、翼君やとわさんに手を振って人間界に戻った。
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