うちに動物が来た
「なぁ美緒、少し話があるんだけど」

「…なぁに」

「俺さ、明日には元居た世界に帰らなきゃ行けないんだ」



絶望、ただその一言が美緒の瞳に映っていた。

父さんが作ってくれた朝食を食べ終え、俺は美緒の部屋で父さんに話した事を話した。
母親、そして姉が居なくなり今度は家族だと認めたイヌさえも消え去る、きっと美緒には耐えられないんじゃないだろうか。



「…はすくんまで、いなくなっちゃうの?…どうして?」

「美緒が、嫌だっていうなら側に居る」

「いやだっ!!!やだよ!!なんで…どうしてみんないなくなっちゃうの…?」



せっかく止まったはずの涙でさえ、干からびてしまうのではないかと思う程流している少女をぎゅっと抱きしめた。
俺に出来る事は無い。
ただ少女を悲しませる事しか出来ないのは、嫌だから。

…病弱な姿を見せない様に明るく振舞っていた少女の気持ちは、分からない事も無い。
だけど俺は、少女の本当の顔を見たいから、その小さな身体を抱きしめるんだ。



「美緒はどうすればいいのっ…ねぇね」

「美緒…」



お姉ちゃんが居ない今、頼れるのは俺と父さんだけだ。
だったら美緒の為に、俺がしっかりしなければ。

もう心は決まった。
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