うちに動物が来た
「やっぱり、帰るのか?」

「きっとすぐ帰って来れるから」

「…はすくん?」



深緑のマフラーを巻いて玄関先に立つ。
迎えが来てしまった様で、後ろには自称案内人の男が立っていた。

父さんが見送ってくれた中、話し声でも聞きつけたのだろうか。
涙目の美緒が立っていた。



「みんな…美緒からはなれていっちゃうの…?」



背けた視線を美緒に向けると、予想はしていたが涙を流し始めた。
気付けば身体が動いていて、小さな身体を抱きしめていた。

目頭が熱くなるのを感じた。
俺が人間界に行く時の約束は、人間に情を持たない事だったのに。
こんなんじゃ当分帰れそうもない。
振り向き案内人に一言。



「…当分は向こうに戻らないから」

「そうですか、王に伝えておきましょう。七日後、強制帰還がありますのでお忘れなく」



たった一人の少女にここまで動かされるなんて。
こんな気持ち初めてだ。

きっと好きなんだろうな、本当に。
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