うちに動物が来た
「ハスキー犬の“魔獣”、はすを人間界滞在期間七日オーバーで強制帰還させます」




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「七日ぶりですね、はすさん」

「…またかよ」

「はすくん…?」



七日目の朝、父さんは仕事に向かってしまったが今日帰る事、そして今までありがとうと伝えた。
父さんもこの間みたいに、少しだけ泣いていた。

また案内人がやって来て柔らかい笑みを見せている。

きゅっと服の裾が掴まれる。
美緒の大きな瞳が揺れていた。



「は、はすくんきいて…」

「美緒?」

「…美緒ね、まつから。はすくんがかえってくるまでまつから」



涙を堪える美緒は、俺を待つと言ってくれた。
少なくとも、“七年”は会えないのに。

最後に、美緒の温もりを忘れない様に強く抱きしめた。



「…俺が帰ってくるまでに好きなヤツが出来たら俺の事なんて忘れて?」

「え…?」

「すぐには帰って来れないから」

「美緒まつよ、1ねんでも10ねんでも100ねんでも!」



100年は大袈裟と弱くデコピンを食らわす。
でも、少し安心した。



「必ず帰ってくるから、…待ってて」



そう言い残して、美緒に背を向けた。
今は泣いてる場合じゃない。

案内人について、家を出た。
…さようなら、美緒。



2×××年3月3日
強制帰還により人間界から一匹の“魔獣”が消えた。
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