うちに動物が来た
「美緒、身体の調子はどうだ」

「結構良くなった、今なら外で走れるかも」

「そうか…お前も大人になったな」

「…?」



はすくんが居なくなって、七年が過ぎた。
帰ってくるなんて言ってたのに、全くと言っていい程帰ってくる気配がない。

私の病状は二年前に悪化した。
熱い空気でさえも身を震わす様になり、家での療養生活では限界があると病院に入院したっきりだった。
学校にも行けない、外にも出れない、これだけつまらない生活を七年前明るくしてくれたのははすくんだった。

確かにはすくんが居なければお姉ちゃんやお母さんと離れる事は無かったかもしれない。
でも家でひとりぼっちだった私を助けてくれたはすくんを、恨むことは出来なかった。



「美緒!調子はどう?」

「それさっきもお父さんに聞かれたよ、…お姉ちゃん」



私の病室は夏でも寒いほどの冷房を入れるので、他の患者さんは居ない。
だから寂しくない様にってお父さんや、高校に入学したお姉ちゃんやお母さんが時々来てくれる。

お母さんははすくんが居なくなった半年後、はすくんに謝りたいと帰って来たけどはすくんは居なかったからずっと泣いてた。
今も一緒には暮らしてない。
私はお父さんと、お姉ちゃんはお母さんと一緒に暮らしている。

要らない椅子は片付けようと言ったのに。

私の家族にはいつからか、はすくんが加わっていたみたいで、病室には三脚の椅子と端に置かれた一脚の椅子があった。
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