うちに動物が来た
受理されたのは1年後の事だった。
これでやっと、俺は籠の中から抜け出せる事が出来る。

美緒に会えると思うと、心が弾んだ。
部屋の荷物などは新しく俺の家になるマンションに全部転送済みだそうだ。
思い残す事はない。
8年ぶりに、人間界に行ける。



「…さようなら」



12月25日はす、16歳。
とある少女の幼馴染の高校一年生として、人間になった。
俺はもう狭間の生物じゃない。




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とりあえず病院に着いた。
耳や尻尾が無くなったとはいえ、何故だか嗅覚はいつも通りだった。
とても薄い美緒の匂いを辿って着いた病院、中で名前を聞くと病室を教えてくれた。

閉めきられた孤立した病室、一度だけノックすると中から返事がきた。
扉を開けた中年男性に、見覚えはあった。



「…ただいま、父さん」

「……っ…はすくん!?」

「美緒…‼」



父さんの横をすり抜けて、色々な点滴に繋がれた少女…美緒に駆け寄り抱きしめた。
8年ぶりの美緒の温もりにとくりとくりと心音が速まった。

一日が長く感じた今までとは違う。
今は一分一秒すら惜しい。

髪が伸びた。
大人びた。
綺麗になった。
そんな言葉よりもまずは。



「ただいま、美緒」

「っ…おかえり、はすくん!!!」



この少女の笑顔を見れるなら、俺は何年掛かっても少女の元に来よう。
例えそれが、死に際でも。
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