うちに動物が来た
何だかイライラする。
オレの心と一緒に尻尾も
ぶんぶんと強く振られ、
べしっべ しっと床を叩いていた。

「はすー、ここわかんない」

「え?あぁ…だから、定理を応用すれ ば良いんだよ」

「うー、わかんないよー」

トンと葵とはすと呼ばれる
男の肩がぶつかる。
まだ会って一日も経ってない、
でも、優しい笑顔を
向けてくれた葵に
誰かが近づくのって、
何だかすごくいやだ。
モヤモヤする。

葵に甘えに行こうか。

「んにゃ!」

「わ、つ、翼っ…」

「翼?葵、ソイツ翼っていうの か?」

「うん、そうだけど」

「…そっか」

葵の側に行ったつもりが、
はすに抱き上げられる。
葵の腕に居られないのは
全く嬉しい事ではないが、
はすの匂いに何かを感じ た。

はす、翼のこと
いじめちゃダメだよーと
間伸びした声で一言言って葵が
リビングから立ち去った。
じっとはすの目を見ていると、
ふと目 が合う。
コイツ、別に女が好きとか
そういうあれじゃない。
隠し通した下心があるかも
しれないが。

「何してんの?」

「や、翼がすっげぇ見つめてくるか ら見つめ返してた。あれ、何それホッ トケーキ?」

「うん、お腹空いたのかなって思っ て」

「ネコってホットケーキ食うの?」

「食べる…と、思うよ」

ぴょんとはすの手から
離れホットケー キの方に
歩いていく。
離れ際はすの手を尻尾でべしっと
叩いてやった。
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