駆け抜けよ
「・・・・私は」


少女は口を開いた。
小さな声だったが、やけに耳にするりと入っていく。

そんな時だ。

ドンッ、と地面が揺らいだ。
まるで土の中で何かが跳ねたみたいに


「・・・・何だァ?一体全体何があったっていうんだよ・・・・」


ナキはあたかも飄々とめんどくさそうに言葉を発した。


この揺れの正体を知っていて。
彼は、あえて、わざと、なんともないように振舞うことを選んだ。


嫌な汗が背に流れ、手も汗でベタつく。

それすら気のせいだと己に言い聞かした。

まさか、そんなはずは。
あり得ない、そんなこと。

頭の中でずっとずっと、駆け巡る。

この揺れは、この揺れは

別の國の城主がこの國に来た時と同じ





何故。





そんな言葉がするりと口から溢れて空(くう)へと消えた。
< 8 / 16 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop