姿も見えずに糸電話
男からの電話
夏の暑い夜のことだった。

日照りで、
断水をする地域が多くなり、
それでもお天気お姉さんは
雨は当分降らないと言う。

そんな夜、
滅多に鳴ることがない家の電話が鳴った。

「電話してもいいですか?」

受話器をとったとたん
いきなりその言葉。

声は男で、
不思議な電話。

私の返事は

「いいですよ。」

普通は気持ち悪くて、意味のわからないことだと思うのだろうが、
電話の声は安らぎを与える声だった。

声の主は男。
知っているのはそのくらい。


それから電話はほぼ毎日あった。
彼と話す時間は一日30分程度。


電話だけの関係で、
会ったこともないのに。
なのに、
たぶん好きになった。


私はさみしかったのかもしれない。

この不思議な関係が好きなだけなのかもしれない。

何より声が好き。
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