姿も見えずに糸電話
それは昨日の夜のことだった。
久しぶりに雨が降っていた。
たくさん振っていた。

夜、電話があった。
雨の音と、
荒い息が聞こえた。

しゃくり上げた息。
不規則な呼吸。
雨の音。

こんなことは初めてで、
電話の相手がわからなかったぐらい。

「もしもし?」

「…ごめんね、。雨だね、。」

声を聞いてわかった。
彼だ。

「泣いてるんですか?」

「わかんない。。」

聞きとりにくい声で、返事が返ってくる。

「今、外ですか?どうしたんですか?」

「外だよ、。寒い、雨が。」
荒い息。
雑音。
雨の音。

外から電話は初めてだ。
それに、取り乱した声も。

「大丈夫ですか?何かあったんですか?」
こんな質問をしたのは初めてかもしれない。
そういえば、私たちの電話は、お互いのことに干渉しない内容ばかりだった。

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