姿も見えずに糸電話
雨の音。
彼の呼吸。
「僕が電話して、初めての雨だよ。雨が降ると交代なんだ。
 そういうルール。多分。」

聞きとりにくいが、真剣な話らしい。

「交代?」

「寂しい・・・」

「今どこですか?」

聞いてしまった。
禁句だったのかもしれない。

「ごめんね」
ブツ。ツーツーツー

電話が切れた。

私も泣いていた。
最後の言葉が頭に残っていた。

「ごめんね」

何故謝ったのだろう、その答えはスグわかった。
電話が切れたとたん、

寂しくてたまらなくなった。


私は寂しさをもらってしまった。

さみしくて、
さみしくて、
さみしくて、
さみしくて声が聞きたくて

適当に電話のボタンを押した。
繋がるわけもなく、
適当に。
適当に。
番号を押す。

コール音が6回。

ブツ。

「もしもし?」

男の声で、いつもの人とは違う声だった。
でも、それでもよかった。

誰でもよかった。

「電話してもいいですか?」
それは私の口から出た言葉だった。
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