谺する愛
「お仕事をされていらっしゃらないのですか?」
「はい戦地から、命からがら帰って来たばかりですよ。
これからのことを考えようと思ってね。」
真知子も、
「私は戦争未亡人なのよ。
と言いたかったが、ぐっと言葉を飲み込んだ。
「ご苦労様ゆっくり休んでから、
考えた方が良いわよ。」と、
続けて話したかったが、
言葉が喉に詰まった。
労わる想いを小さな笑みの眼差しに変えた。
続けて話したかった。
「今母一人、子一人の暮らしです。」と
言いたかったが、これ以上身の上の話は
止そうと想った。