谺する愛


男性はすかさず、令子に向かって言った。



「上手になったね。」と話しながら、



おもむろにハンカチの包みを解き始めた。



真知子は黙って男性の仕草を見て居た。



弁当を包んだハンカチの、端の文字が目に入った。



その端には「小森幸次郎」と言う名が見えた。


真知子は名も知らない人との会話に、


不安を持って居たが、漸く名前を知ることが


出来た安堵感が込み上げて来た。


だがそしらぬ顔をした。
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