谷村優真の内緒話
バイト先のコンビニへ到着した優真は素早く着替え、レジに立った。雪が降っているせいか人が少ない。今日は楽そうだ、優真は心の中でほそく笑んだ。
並ぶ客の大半はタオルや傘を買っていく。予報にもなかった突然の雪に対策をしてなかったようだ。慣れた手つきで素早く業務をこなしていく優真の目に一人の男性が映った。酒を飲んで酷く酔っ払っていた。問題を起こさないか、そんな不安が頭をよぎる。当然の如く客を追い出すことも出来ず、ただ警戒するのみだった。レジに立って一時間が経過した。すると、後ろから声をかけられた。先輩の飯島柚子だった。
「レジ代わるよ、休憩入りな」
素っ気ない口調ではあるものの、時折彼女の見せる気遣いは優真にとってはかなりありがたいものとなっていた。
「ありがとうございます」
短く礼を言うと優真は奥へと戻った。パイプ椅子に腰掛け、鞄から取り出した烏龍茶をゴクッと飲み干す。すると、レジにいるはずの柚子が何故か入ってきた。
「別の先輩に代わってもらっちゃった」
ニヤリと笑いながら柚子は言った。そして、テーブルの上にある烏龍茶に目を向けると「お、百六十円のやつじゃん。良いモン飲んでるね」と優真の烏龍茶を飲んだ。
「勘弁して下さいよ先輩、先輩の一口は多すぎやしませんか」
彼女に飲み物を飲まれるのは何回目だろう。初めの頃は意識してしまったものの、今となってはすっかり慣れてしまった。
「気にすんなって。あとでラーメン奢ってあげるから」
「あ、ホントですか?ありがとうございます!」
思わぬ痛手を食らった優真にとってはありがたい一言だった。
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