新訳 源氏物語
帝が冬の半ば頃から密かに夢中になっている女性がいて、それは身分の余り高くない女性だというものだった。

その噂は流行病の如く一気に、それでいて足下を流れる地下水のように密やかに人を介して伝わり、確実に広がっていた。

目撃回数が増加するにつれて、女性の名も判明した。

女の名は桐壷、身分は更衣であった。

この時、帝三十歳、桐壷二十八歳であった。
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