ファイブコンプレックス
コンプレックス
美菜は、双子の妹である美樹と、ギターを鳴らした。質素な、ただの素引きである。僅かに変わる高低で、どのコードを、どのように弾いているのかを聞き取る。二人は耳がよかった。

「あ、ごめん、ミー。今んとこ間違えた」
「判ってる。じゃ、もっかい、Cからやろう」


二人は譜面は見ていなかった。ただコードを淡々と、決まった順番に弾いているだけだ。親の影響で姉妹一緒に始めたギターは、いつも必ずこれから始まる。十年ほど経った今でも、それは変わらない。基本を怠るなというのも、親の教えだった。
一通り終わると、譜面を立てた。基本的に妹・美樹が主旋、姉の美菜がコードをやる。美菜には他にも唄うという、重要なオマケがくっついているからだが、ピックを弾く実力は、美菜の方が確かに上であった。もちろんそれに、妹は気付いていない訳ではない。
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