ファイブコンプレックス
妹の美樹は、姉にコンプレックスを僅かながらも感じていた。しかしそれが僅かですんだのは、ただ美樹が、姉妹二人だけで演奏したいと、それだけを願っていたのだ。

姉には、確かな実力が伴っている。妹は自分は勝っているなどと、安易に感じることもなかった。美樹は正直に、同い年の姉には、届かないと思っている。いくら双子でお互いが似ていても、秀でている所とそうでない部分があるのは当然だが、羨ましいほどに、姉は出来すぎていた。
しかし姉は必ず、妹を認めた。美樹が唯一勝てるのが、彼氏のいることと、160強ある高身長とリズム感のよさだけで、他は群を抜いて秀でる美菜。そうであって美菜が唯一褒めるのが、妹である美樹なのだ。それが美樹は、とても嬉しかった。
彼氏よりいつまでも一緒にいたいと願う、ただ一人の姉であったのだ。
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