ファイブコンプレックス
前奏部分をかき鳴らす。
ついで透明な歌声が響く。もう子供ではない双子が使うのには狭い、このひと部屋に。
それはあまりにも自然であったがために、音は壁や机や、窓やさらに自分たちにも吸い込まれ、その感じが、美樹をふわっと気分良くさせる。
きっと美菜も同じであろう。歌っている表情が、何よりも素敵だから。


“このまま世界が溶けてしまえばいい。
すべてが溶けて、なにもかも溶けて、みんな一緒になればいい。ごちゃごちゃに混ざって、真っ黒になっちゃえばいい。
めんどくさいことすべてなくなって、宇宙みたいになっちゃえばいい。

自暴自棄?違うよ。



ただ疲れただけ。”
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