情熱のメロディ
「ごめん。少しずれてしまったね」
「いえ……すみません。私も入り込みすぎてしまったみたいです」
曲に感情移入することは悪いことではないが、今は2人の演奏を擦り合わせるための練習だ。カイの存在がアリアの意識から外れてしまってはいけない。
「じゃあ、ここのa tempoからもう一度」
「はい」
少し複雑なキーチェンジ――技術的にも弾きにくい箇所だ。アリアはカイの音にしっかりと耳を傾けながら指を動かしていく。
個人練習をしたときも、この箇所を合わせるのには少し時間がかかるだろうと予想はしていたが……アリアの予想とは何かがずれた2人の“夢”に、違和感を覚えるのはどうしてだろう。
技術的には2人とも特に問題なく演奏している。合わないのは2人での練習が初めてだからなのか。
違和感は拭えないまま、けれど、その部分を過ぎるとまた2人の演奏はシンクロしていく。
演奏を終えると、カイはふぅっと息を吐いてアリアを見た。
「どうだった?アリアの意見を聞かせてくれる?」
「全体的には、特に大きな問題はないと思います。テンポや表現の擦り合わせは必要だと思いますが、そんなに時間もかからないでしょうし。あとは……」
アリアは自分の心にある違和感を言うべきかどうか迷う。“何かが違う”という漠然とした意見は、あまり建設的とは言えない。技術に問題があったわけでもなければ、2人の演奏がひどくずれたわけでもない。
「調が変わるところ……か」
すると、カイが呟くように言い、眉を下げて笑った。
「いえ……すみません。私も入り込みすぎてしまったみたいです」
曲に感情移入することは悪いことではないが、今は2人の演奏を擦り合わせるための練習だ。カイの存在がアリアの意識から外れてしまってはいけない。
「じゃあ、ここのa tempoからもう一度」
「はい」
少し複雑なキーチェンジ――技術的にも弾きにくい箇所だ。アリアはカイの音にしっかりと耳を傾けながら指を動かしていく。
個人練習をしたときも、この箇所を合わせるのには少し時間がかかるだろうと予想はしていたが……アリアの予想とは何かがずれた2人の“夢”に、違和感を覚えるのはどうしてだろう。
技術的には2人とも特に問題なく演奏している。合わないのは2人での練習が初めてだからなのか。
違和感は拭えないまま、けれど、その部分を過ぎるとまた2人の演奏はシンクロしていく。
演奏を終えると、カイはふぅっと息を吐いてアリアを見た。
「どうだった?アリアの意見を聞かせてくれる?」
「全体的には、特に大きな問題はないと思います。テンポや表現の擦り合わせは必要だと思いますが、そんなに時間もかからないでしょうし。あとは……」
アリアは自分の心にある違和感を言うべきかどうか迷う。“何かが違う”という漠然とした意見は、あまり建設的とは言えない。技術に問題があったわけでもなければ、2人の演奏がひどくずれたわけでもない。
「調が変わるところ……か」
すると、カイが呟くように言い、眉を下げて笑った。