情熱のメロディ
「そ、んなこと……ないですよ」
押し出した言葉は掠れて、アリアの心に生じた迷いを表したようだった。
カイは単純にアリアの恋を応援してくれているだけ――アリアがカイを好きでも、国を背負う立場にある彼にとっては迷惑でしかない。初恋の憧れなんて軽い気持ちで近づいていい相手ではないのだから……“幸せ”だなんて思ってくれると、期待してはいけない。
「アリア……君は素敵な女性だよ。君の音楽がそれを一番証明している。恋をして、それを実らせて、君の可能性は広がっていく。音楽家としても、1人の人間としても……君は、自由に生きるべきだ」
カイはそう言うと、フッと息を吐いて立ち上がった。
「ごめんね。今日は変なことばかり言ってしまったよね。今日の練習はここまでにしよう」
そして、カイはアリアに背を向けて片づけを始めてしまった。アリアには彼の表情は見ることができなくて、でもそれ以上声を掛けることも憚られて、アリアも静かに片づけを始める。
2人の楽器がケースに収まって、緊張して高揚していた気持ちが暗闇に沈んでいく。ケースのジッパーを引く音が、とても大きく響いた。
押し出した言葉は掠れて、アリアの心に生じた迷いを表したようだった。
カイは単純にアリアの恋を応援してくれているだけ――アリアがカイを好きでも、国を背負う立場にある彼にとっては迷惑でしかない。初恋の憧れなんて軽い気持ちで近づいていい相手ではないのだから……“幸せ”だなんて思ってくれると、期待してはいけない。
「アリア……君は素敵な女性だよ。君の音楽がそれを一番証明している。恋をして、それを実らせて、君の可能性は広がっていく。音楽家としても、1人の人間としても……君は、自由に生きるべきだ」
カイはそう言うと、フッと息を吐いて立ち上がった。
「ごめんね。今日は変なことばかり言ってしまったよね。今日の練習はここまでにしよう」
そして、カイはアリアに背を向けて片づけを始めてしまった。アリアには彼の表情は見ることができなくて、でもそれ以上声を掛けることも憚られて、アリアも静かに片づけを始める。
2人の楽器がケースに収まって、緊張して高揚していた気持ちが暗闇に沈んでいく。ケースのジッパーを引く音が、とても大きく響いた。