情熱のメロディ
　「シンプルなシャンパンドレスはいかがでしょうか？色は明るい赤の方がアリア様にはお似合いでしょう。切り替えの部分に白いリボンをつけますと、可愛らしくなりますよ」
　「そうですね……リボンをバラの飾りにできますか？」
　「えぇ、もちろんです」

　カイは店主と共に机に向かって話し込んでいる。店主はスラスラとペンを走らせてカイの希望通りのドレスのデザイン画を描いていた。

　アリアに気づくと、カイは微笑んで近くのマネキンを指差す。

　「このドレス、着てみて」

　店主とカイが話していたデザインとは異なるワインレッドのシャンパンドレス。アリアには少し大人っぽ過ぎて着こなせる自信がない。

　「今、イメージに一番近いものがこれなんだ。生地の色やデザインは変えて作ってもらうから、君も好きなように意見を出してくれればいい」

　カイはそう言うと、アリアの採寸をしてくれた店員に目配せをした。彼女は軽く頭を下げてマネキンのドレスを脱がせ、アリアを再び試着室へと促す。

　店員はやはり手慣れた所作でアリアを着替えさせ、軽く髪を結い、メイクも施してくれた。

　いつもはおろしているウェーブの茶髪は前髪サイドを残してすっきりとまとめられ、普段はほとんど手をつけない目元にアイシャドウとアイラインを入れられるだけでかなり雰囲気が変わった。その化粧のおかげか、少なくともドレスに着られているということはなさそうだ。

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