情熱のメロディ
  アリアがカイのもとへ戻ると、カイは顔を上げてアリアを見る。カイの表情が驚きに染まるのを見て、とても恥ずかしくなり、アリアは思わず視線を逸らした。

 「あの……このドレスは大人っぽくて……もっと明るいトーンの色じゃないと、似合いませんよね」

 店主もカイも先ほどそう言っていたし、アリア自身も鏡で自分の姿を確認した。普段のコンサートでも、アリアは明るい色のドレスを着るし、デザインも装飾が可愛らしいものだ。
 
 しばらく沈黙が続いて、アリアはおそるおそる視線を上げていく。すると、カイは少し口を開けたままアリアを見つめて動かないでいた。

 「カ、カイ様?」
 「あ、いや……」

 アリアの呼びかけにハッとして、カイは眉を下げて笑う。それからゆっくりとアリアに近づいて、アリアの耳元に残してある髪を一房……人差し指で掬った。

 トクン――と、アリアの心臓が弾む。

 「コンサート以外で髪を結っているところ、初めて見るね。こういう色も……似合うんだ」

 とても穏やかな笑顔で言われて、カッとアリアの体温が上がる。化粧のせいと誤魔化せないほどに頬が熱くなっていくのがわかった。
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