情熱のメロディ
(2)
それからアリアの音楽は少し調子を取り戻した。交響楽団の練習でも、これまで以上に力を入れて周囲へ迷惑をかけないように努めている。
だが、相変わらずカイとのデュオは成果が出ず、アリアはだんだんと近づいてくる音楽祭への焦りを感じ始めていた。
今日の練習も、少し気が重い。城のエントランスで、思わずため息を零してしまう。
「アリア様」
「はい!」
突然呼ばれて、アリアはハッと振り返った。肩までの黒髪をひとつに結び、きっちりと首までボタンを留めてあるブラウス、女性には珍しくズボン姿の年配の女性は……国王の側近だ。名は、確かイェニーと呼ばれていたと思う。
「申し訳ありません。少し議会が長引いておりまして、カイ様はまだこちらにお戻りになれません。音楽室でお待ちいただけるように、とカイ様からの伝言を預かって参りました」
「あ、はい。わかりました。わざわざありがとうございます」
頭を下げてお礼を言うと、イェニーは「それでは」と踵を返した。彼女も議会に参加していたはずだろうに、抜けてきてくれたのだろう。
アリアは真っ直ぐ背筋を伸ばして歩くイェニーの後姿を見送ってから、ゆっくりと音楽室へと歩き出した。いつもはエントランスまでカイが迎えに来てくれて一緒に歩く階段を、1人で上るのは少し心細い。
本来ならばアリアが足を踏み入れられない場所だからか、とても緊張して足が震えた。カイが手を引いてくれるとそんなことを考える余裕もないのに……
だが、相変わらずカイとのデュオは成果が出ず、アリアはだんだんと近づいてくる音楽祭への焦りを感じ始めていた。
今日の練習も、少し気が重い。城のエントランスで、思わずため息を零してしまう。
「アリア様」
「はい!」
突然呼ばれて、アリアはハッと振り返った。肩までの黒髪をひとつに結び、きっちりと首までボタンを留めてあるブラウス、女性には珍しくズボン姿の年配の女性は……国王の側近だ。名は、確かイェニーと呼ばれていたと思う。
「申し訳ありません。少し議会が長引いておりまして、カイ様はまだこちらにお戻りになれません。音楽室でお待ちいただけるように、とカイ様からの伝言を預かって参りました」
「あ、はい。わかりました。わざわざありがとうございます」
頭を下げてお礼を言うと、イェニーは「それでは」と踵を返した。彼女も議会に参加していたはずだろうに、抜けてきてくれたのだろう。
アリアは真っ直ぐ背筋を伸ばして歩くイェニーの後姿を見送ってから、ゆっくりと音楽室へと歩き出した。いつもはエントランスまでカイが迎えに来てくれて一緒に歩く階段を、1人で上るのは少し心細い。
本来ならばアリアが足を踏み入れられない場所だからか、とても緊張して足が震えた。カイが手を引いてくれるとそんなことを考える余裕もないのに……