情熱のメロディ
アリアは緊張で冷たくなった指先で、印のついたページを開く。
『○○/××、今日の公演は――』
どこかで見たことのあるような筆跡に、アリアは慎重に文字を追っていく。紙の質はとても良く、呪文が施されているのか古いことは分かるが劣化はあまり見られない。インクの滲み方、ときどき掠れる文字の流れ……
「ミュラー……ブレネン?」
おそらく、アリアの記憶が正しければこの筆跡はミュラーのものだ。芸術博物館でしか見られないはずのミュラーの日記を、アリアは読んでいる。一般公開されることのないそれには、彼の音楽活動が綴られている。
『彼女の音楽はとても素晴らしい。神に与えられた才能と、それを大切に磨き上げる彼女の努力、音楽への愛。屈託のない笑顔は私の創作意欲を掻き立てるかのように……心を乱す』
1人のピアニストを褒め称える文章から、彼の文字には焦りのような感情が浮かぶ。おそらくかなり筆を走らせたのだろう。彼女との逢瀬はピアノの練習のようだが、彼の文章からはだんだんとそれ以上の感情が多く浮かんでくる。
『――私は彼女を愛している』
そして、フローラが印をつけたページの数枚目には、ハッキリとミュラーの想いが文字となっていた。
『告げることは許されない。私には決められた婚約者がいる』
それからはミュラーの葛藤が綴られ、アリアの心を締め付けていくばかりだった。
『○○/××、今日の公演は――』
どこかで見たことのあるような筆跡に、アリアは慎重に文字を追っていく。紙の質はとても良く、呪文が施されているのか古いことは分かるが劣化はあまり見られない。インクの滲み方、ときどき掠れる文字の流れ……
「ミュラー……ブレネン?」
おそらく、アリアの記憶が正しければこの筆跡はミュラーのものだ。芸術博物館でしか見られないはずのミュラーの日記を、アリアは読んでいる。一般公開されることのないそれには、彼の音楽活動が綴られている。
『彼女の音楽はとても素晴らしい。神に与えられた才能と、それを大切に磨き上げる彼女の努力、音楽への愛。屈託のない笑顔は私の創作意欲を掻き立てるかのように……心を乱す』
1人のピアニストを褒め称える文章から、彼の文字には焦りのような感情が浮かぶ。おそらくかなり筆を走らせたのだろう。彼女との逢瀬はピアノの練習のようだが、彼の文章からはだんだんとそれ以上の感情が多く浮かんでくる。
『――私は彼女を愛している』
そして、フローラが印をつけたページの数枚目には、ハッキリとミュラーの想いが文字となっていた。
『告げることは許されない。私には決められた婚約者がいる』
それからはミュラーの葛藤が綴られ、アリアの心を締め付けていくばかりだった。