情熱のメロディ
翌日、アリアはフラメ王国第一王子カイ・ブレネンを目の前にして、夢を見ているようなふわふわした感覚を持て余していた。
憧れの、それも一国の王子という普通ならば会うことさえない立場の人と対峙している。アリアを城へ呼び出したカイは、客室へ入ってくると綺麗な動作でアリアの向かいに座り、目を細めてアリアに笑いかけてくれた。
「久しぶりだね、アリア」
「は、い……ご無沙汰しております」
その流れるような歩き方に見惚れていたアリアは慌てて立ち上がり、頭を下げて挨拶をした。ここ数年、文化省の補佐に就いて学んでいるらしいカイは、音楽学校を視察に来ることも多く、大きなコンクールでも審査員として国王夫妻が来るときは必ず同席していたから、アリアとはそれなりに面識がある。最後に会ったのだって、カイが交響楽団の演奏を聴きにきてくれた1週間前のコンサートの日だ。
だが、長期に渡って定期的に顔を合わせるということは、これが最初で最後の機会だろう。アリアはカイに促されて再びソファに腰を下ろし、おずおずと視線を上げた。
「そんなに緊張しないで」
クスッと笑ったカイの笑顔に、トクンと心臓が一際大きく音を立てる。こんな風に笑いかけてもらう度にドキドキしていたら、本当に寿命が縮んでしまう。
彼の父である現国王ヴォルフにそっくりな容姿は威厳があるというのだろうか――少し怖い印象も与えるが、カイはとても穏やかで優しい。
憧れの、それも一国の王子という普通ならば会うことさえない立場の人と対峙している。アリアを城へ呼び出したカイは、客室へ入ってくると綺麗な動作でアリアの向かいに座り、目を細めてアリアに笑いかけてくれた。
「久しぶりだね、アリア」
「は、い……ご無沙汰しております」
その流れるような歩き方に見惚れていたアリアは慌てて立ち上がり、頭を下げて挨拶をした。ここ数年、文化省の補佐に就いて学んでいるらしいカイは、音楽学校を視察に来ることも多く、大きなコンクールでも審査員として国王夫妻が来るときは必ず同席していたから、アリアとはそれなりに面識がある。最後に会ったのだって、カイが交響楽団の演奏を聴きにきてくれた1週間前のコンサートの日だ。
だが、長期に渡って定期的に顔を合わせるということは、これが最初で最後の機会だろう。アリアはカイに促されて再びソファに腰を下ろし、おずおずと視線を上げた。
「そんなに緊張しないで」
クスッと笑ったカイの笑顔に、トクンと心臓が一際大きく音を立てる。こんな風に笑いかけてもらう度にドキドキしていたら、本当に寿命が縮んでしまう。
彼の父である現国王ヴォルフにそっくりな容姿は威厳があるというのだろうか――少し怖い印象も与えるが、カイはとても穏やかで優しい。