情熱のメロディ
「フリーダ。君が才能あるバイオリニストだということは、国民全員が知っているよ。もちろん僕も」
カイは穏やかな口調で言う。
「君の名前も音楽祭のゲスト候補に上がっていた。実際は、君を支持する声の方が多かったかもしれない。でも、僕が出ることになったとき、君とデュオはできないと言ったんだ」
「どうして……っ、ですか?」
押し出すように声を出すと、カイは静かに続けた。
「君が自信溢れる人だからだよ。君の演奏はとても強くて迷いがない。観客を惹きつけて、離さない。君はすべての人を振り向かせるほどの音を奏でられる素晴らしい演奏家だ。けれど、君の魅力が存分に出るのはソロの方……違う?」
注目して欲しい。
褒めて欲しい。
認めて欲しい。
そう……フリーダは誰かと演奏するのが苦手だ。合わせることで自分が消えてしまうのが嫌なのだ。一緒にされるのが嫌だ。自分はいつも前に出ていたい。
「君にとって、僕と弾くことはさほど重要じゃない。そうでしょう?でも、今回の音楽祭は僕を宣伝に使っている部分があるんだ。だから、君だけを推してあげられない」
フリーダとアリアは正反対ともいえる。アリアは謙虚な少女だ。どれだけ褒め称えられても、コンクールで成績を残しても、それを鼻にかけずひたすら練習を続けている。アリアにとって、彼女自身への称賛は大して意味をなさないのである。
ただ、純粋にバイオリンを愛し、音を紡ぐ。
アリアの音はとても優しく人々を包み込むように響き、楽団でも自然に皆の演奏に溶け込むことができる。フリーダにはないものを持っているのが彼女だった。
カイは穏やかな口調で言う。
「君の名前も音楽祭のゲスト候補に上がっていた。実際は、君を支持する声の方が多かったかもしれない。でも、僕が出ることになったとき、君とデュオはできないと言ったんだ」
「どうして……っ、ですか?」
押し出すように声を出すと、カイは静かに続けた。
「君が自信溢れる人だからだよ。君の演奏はとても強くて迷いがない。観客を惹きつけて、離さない。君はすべての人を振り向かせるほどの音を奏でられる素晴らしい演奏家だ。けれど、君の魅力が存分に出るのはソロの方……違う?」
注目して欲しい。
褒めて欲しい。
認めて欲しい。
そう……フリーダは誰かと演奏するのが苦手だ。合わせることで自分が消えてしまうのが嫌なのだ。一緒にされるのが嫌だ。自分はいつも前に出ていたい。
「君にとって、僕と弾くことはさほど重要じゃない。そうでしょう?でも、今回の音楽祭は僕を宣伝に使っている部分があるんだ。だから、君だけを推してあげられない」
フリーダとアリアは正反対ともいえる。アリアは謙虚な少女だ。どれだけ褒め称えられても、コンクールで成績を残しても、それを鼻にかけずひたすら練習を続けている。アリアにとって、彼女自身への称賛は大して意味をなさないのである。
ただ、純粋にバイオリンを愛し、音を紡ぐ。
アリアの音はとても優しく人々を包み込むように響き、楽団でも自然に皆の演奏に溶け込むことができる。フリーダにはないものを持っているのが彼女だった。