情熱のメロディ
“君の目の前に”という言葉の意味を頭で理解しながらも、アリアは呆然とカイの笑顔を見つめることしかできず、カイは反応のないアリアに苦笑交じりのため息をつく。
「最近他国からの観光客が減っていて、王子である僕を音楽祭に出して話題作りをしたいっていう議会の意向なんだ。最初は断っていたんだけど、なかなか折れてくれなくて……1曲だけならっていう約束で承諾したんだ。ごめんね。僕じゃ、君のパートナーとしては実力も経歴も足りないと思うけれど……」
「そ、そんなことありません!」
アリアは思わず立ち上がって拳を握った。
「音楽祭に推薦していただいただけでも光栄なのに、カイ様と演奏できるなんて私にはもったいないくらいの名誉です!」
カイの音楽センスは王妃に引けをとらないくらい素晴らしい。コンクールには“王子”という肩書きが公平性を欠くと言って参加しないけれど、彼が王妃と共に行うリサイタルは回数が少ないこともあって毎回チケットをとるのが大変なほど好評なのだ。
もちろんそれは、彼らが王族であること自体が宣伝効果にも繋がっている。しかし、フラメ王国民は芸術に関しては厳しい評価を下す。実力の伴わない演奏ならば、何度も足を運ぶ者はいなくなるだろう。彼らのリサイタルが満席以外で行われたことがないのは、王妃とカイの実力を証明している。
「カイ様の演奏は、力強くて、とても心に響く情熱があります!」
一度、音楽学校でカイがバイオリンを弾いてくれたときも、その力強い音に鳥肌が立った。
「最近他国からの観光客が減っていて、王子である僕を音楽祭に出して話題作りをしたいっていう議会の意向なんだ。最初は断っていたんだけど、なかなか折れてくれなくて……1曲だけならっていう約束で承諾したんだ。ごめんね。僕じゃ、君のパートナーとしては実力も経歴も足りないと思うけれど……」
「そ、そんなことありません!」
アリアは思わず立ち上がって拳を握った。
「音楽祭に推薦していただいただけでも光栄なのに、カイ様と演奏できるなんて私にはもったいないくらいの名誉です!」
カイの音楽センスは王妃に引けをとらないくらい素晴らしい。コンクールには“王子”という肩書きが公平性を欠くと言って参加しないけれど、彼が王妃と共に行うリサイタルは回数が少ないこともあって毎回チケットをとるのが大変なほど好評なのだ。
もちろんそれは、彼らが王族であること自体が宣伝効果にも繋がっている。しかし、フラメ王国民は芸術に関しては厳しい評価を下す。実力の伴わない演奏ならば、何度も足を運ぶ者はいなくなるだろう。彼らのリサイタルが満席以外で行われたことがないのは、王妃とカイの実力を証明している。
「カイ様の演奏は、力強くて、とても心に響く情熱があります!」
一度、音楽学校でカイがバイオリンを弾いてくれたときも、その力強い音に鳥肌が立った。