情熱のメロディ
 「すぐに来られなくてごめんね。いろいろと立て込んでいて……」
 「いえ……お忙しいのに、すみません。練習も、もう再開しないといけないのに体調を崩してしまってご迷惑をおかけしました」

 カイはゆるゆると首を振ると、アリアを真っ直ぐ見つめた。

 「ごめんね……僕のせいで、君をこんなに追い詰めてしまった。デュオのことだけじゃない。フリーダのこともそうだ」

 カイはフリーダがアリアの失くした楽譜を持っていたことや他の2人に協力してもらってアリアを閉じ込めたことを認めたと教えてくれた。

 フリーダが音楽祭に出たがっていたことや、なぜフリーダが今回選ばれなかったのか……カイはすべてを話し、それから深く息を吐き出した。

 「フリーダにはきちんと説明した。彼女も納得してくれたと思う。けれど……」

 カイがそっと手を伸ばし、アリアの右手を包み込む。壊れ物を扱うかのようにやんわりと包まれた手首がじわりと熱を帯びる。カイの手はそれほど熱く感じた。

 「君の手首の怪我については、きちんと彼女の責任を追及したいと思っている」
 「待ってください。フリーダさんは故意にそうしたわけでは――」
 「たとえそうだとしても、君を閉じ込めたのはフリーダの指示だ。そこで君が怪我をしたのなら、原因はフリーダにある」

 カイは珍しく怒りを滲ませた声色で早口に喋る。
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