情熱のメロディ
　「……覚悟が足りていないのは僕の方だ。中途半端なことばかりして……夢を叶えるどころか壊してしまうところだった」
　
　カイはそれからフッと弱々しく笑いを漏らし、アリアに揺れる瞳を向けた。その笑顔に、胸が締め付けられて目頭に涙が滲んだ。アリアはそれを隠すように俯き、カイから視線を逸らした。

　「それは……私も同じです。ミュラー・ブレネンの夢は、私が考えていたような甘い夢ではありませんでした」
　「どうして、それを……？」

　アリアの言葉に、カイが息を呑んだ。アリアは身体の奥から搾り出すように声を出す。

　「フローラ様に、お会いしたのです。カイ様がお仕事で遅くなった日……音楽室で」
　「……そう」

　カイはそれだけですべてを悟ったらしい。しばらく２人とも黙ったままだったけれど、やがてカイがフッと息を吐くようにして喋り始めた。

　「君の夢は希望があって素敵だと思ったんだ。壊したくなかった。僕が君に近づきたかったんだよ。でも……できなくて。君に負担をかけて、つらい思いをさせた。ごめんね」
　「カイ様は、悪くないんです。私が楽天的すぎたんです。恋がすべてハッピーエンドだとは限らないのに」

　アリアだって、自分の初恋がハッピーエンドにならないと知っていたのに偽っていた。だからカイに近づけなかった。
　
　「それは……君の恋も？」　
　「え……？」

　アリアはドキッとして顔を上げた。カイは真っ直ぐにアリアを見据えていて、アリアはその真剣さに無意識に身体を震わせた。
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