情熱のメロディ
 「お2人のお互いを想う気持ちがとても素敵でしたわ」
 「途中の苦しい演奏には思わず泣いてしまいました」
 「密かに愛を育んでいらっしゃったなんて、ロマンチックよねぇ」

 アリアはどんどん出てくる2人の恋を肯定する言葉たちに目を白黒させ、どう対応していいかわからず助けを求めるようにカイへ視線を向けた。

 カイはアリアと目が合うとフッとそれを逸らし、拳を握り締める。

 「……あの!皆さん」

 アリアはそこで少し大きな声を出した。また顔を出そうとする期待の芽を握り潰すように、アリアもドレスのスカートをギュッと握って口角を上げる。

 「カイ様と私に、そういったお話は――」
 「もう少し、待ってください」

 アリアの言葉を遮ったのはカイだった。彼はスッとアリアの前に立ち、続けて話す。

 「まだ、きちんと僕から伝えていないんです。議会には明日、ご報告しますから。失礼します」

 カイはハキハキと宣言すると、アリアの手を取って人々の合間を通り抜けていく。

 「まぁ、素敵。私もあんな風に手を引かれたいわ」
 「私も、私のために情熱的な演奏をしてくれる殿方にお会いしたい」

 女性たちは口々にカイとアリアが似合いの2人だと言い、2人が自分たちの前を通るときゃっきゃっと騒ぐ。

 「シュレマー家で決まりですな」
 「カイ様はヴォルフ様とは正反対ですね」
 「しかし、やっとお心をお決めになったようだ」

 男性たちもやれやれという笑顔で2人を見守り、2人が広間を出て行こうとするのを止める人は誰もいなかった。

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