情熱のメロディ
(2)
アリアはフラメ城のエントランスに立って、高い天井を見上げていた。
神が炎の力を人間に授ける様子を描いた天井画は、エントランスに入り込む日差しに輝いて見える。本来ならば、国の重役や王族・城に仕える者しか出入りを許されない場所――未だに自分がこの場所に立っている現実が信じられない。
エントランスには移動呪文用のスペースが設けられているが、アリアは基本的な呪文しか使えないため、移動は主に徒歩である。幸い、アリアの家から城までもさほど遠くない。
移動呪文は人の身体を運ぶだけあって、それなりの技術と鍛錬が必要なのだ。城門からは衛兵が呪文でエントランスまで移動させてくれるため、門から城の入り口までの長い距離は歩かなくてもいい。
「アリア!」
アリアが練習場所に指定されている客室へと足を踏み出すと、階段の上から声が降ってきた。見上げれば、カイが少し急いで降りてきてくれる。
「カイ様、こんにちは」
アリアが丁寧にお辞儀をして挨拶をすると、カイはフッと笑ってアリアのバイオリンと楽譜の入ったカバンを手に取った。
「案内するよ」
「え……あっ!お、お待ちください!客室はあちらではないのですか?荷物も――!」
カイの笑顔に見惚れていたアリアは、軽くなった両手を見て慌ててカイの後を追う。
「練習は音楽室でしたいんだ。それに、荷物くらい持たせてよ。迎えも荷物持ちも断られては、僕の立場がない」
眉を下げて笑いながら少し振り返るカイは、そう言い終えるとゆっくりと階段を上がっていく。男性として女性をエスコートさせて欲しい――カイは王子として教育されている以上に紳士でスマートだ。
神が炎の力を人間に授ける様子を描いた天井画は、エントランスに入り込む日差しに輝いて見える。本来ならば、国の重役や王族・城に仕える者しか出入りを許されない場所――未だに自分がこの場所に立っている現実が信じられない。
エントランスには移動呪文用のスペースが設けられているが、アリアは基本的な呪文しか使えないため、移動は主に徒歩である。幸い、アリアの家から城までもさほど遠くない。
移動呪文は人の身体を運ぶだけあって、それなりの技術と鍛錬が必要なのだ。城門からは衛兵が呪文でエントランスまで移動させてくれるため、門から城の入り口までの長い距離は歩かなくてもいい。
「アリア!」
アリアが練習場所に指定されている客室へと足を踏み出すと、階段の上から声が降ってきた。見上げれば、カイが少し急いで降りてきてくれる。
「カイ様、こんにちは」
アリアが丁寧にお辞儀をして挨拶をすると、カイはフッと笑ってアリアのバイオリンと楽譜の入ったカバンを手に取った。
「案内するよ」
「え……あっ!お、お待ちください!客室はあちらではないのですか?荷物も――!」
カイの笑顔に見惚れていたアリアは、軽くなった両手を見て慌ててカイの後を追う。
「練習は音楽室でしたいんだ。それに、荷物くらい持たせてよ。迎えも荷物持ちも断られては、僕の立場がない」
眉を下げて笑いながら少し振り返るカイは、そう言い終えるとゆっくりと階段を上がっていく。男性として女性をエスコートさせて欲しい――カイは王子として教育されている以上に紳士でスマートだ。