情熱のメロディ
 「……カイ、様」
 「怖い?」

 そう問われて、アリアは首を振る。

 「怖く、ないです……でも、わ、私……男の人と、こんなの、初めてで……カイ様、みたいに、上手くできない、です」

 緊張しすぎて掠れる声と、途切れてしまう言葉。アリアは恥ずかしくなってカイの胸に頬を寄せた。ドクン、ドクンと大きく波打つのは……カイの心臓だ。

 「僕だって初めてだよ……心臓の音、聴こえるでしょう?」
 「はい……」

 カイは優しくアリアの頭を撫でてくれた。アリアはとても安心して、ゆっくりと顔を上げる。上目遣いにカイを見るアリアに、カイの喉仏が大きく動く。

 「あんまり……可愛い仕草をしないで」

 カイは困ったように笑い、アリアの身体を少し離した。それから大きく息を吸い、吐く。

 「後ろを……向いて」

 カイがアリアの肩に手を添えて、優しく促す。アリアは言われるままにカイに背を向けた。これからカイがすることに期待して震える吐息と不安でドキドキと脈打つ心臓を抱えて……

 「僕のドレス……気に入らなかった?」

 ドレスのジッパーをなぞってカイの指先がアリアの背を降りていく。ただ触れているだけなのに、じわりと熱くなる身体の奥はアリアにとっても未知の世界だ。

 「こ、れは……私なりの、決別だったんです。これ以上、カイ様を困らせたくなくて……」
 「うん……」

 カイはわかっている、と言うようにアリアを後ろから抱きしめて肩口に唇をくっつけた。
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