情熱のメロディ
 汗ばんだ肌にはりついた髪を除けながら、カイがアリアの額や頬、首筋に優しく触れていく。

 「アリア……好きだよ。君のこと、ずっと……見ていた」

 カイは優しく囁いてキスをしてくれた。

 今までの濃厚な行為とは違って、軽く触れ合わせるだけだったけれど、アリアはこの啄ばむようなキスが一番好きだと思った。行為の最中のカイは少し強引で、それは男らしいともいうのかもしれないけれど……普段の穏やかで優しいカイの方が、安心する。

 カイは何度か唇を重ねた後、アリアから身体を離し、彼女の隣に身体を沈めた。

 「カイ、様……?」

 離れてしまった熱、少し心細くなってアリアは身体をカイの方へ向ける。すると、カイはかぁっと真っ赤になって、アリアを腕の中に閉じ込めた。

 「あんまり、可愛い仕草を、しないで……って言ったでしょう?」

 カイははぁっとため息をついてから、口を開く。

 「つらく、なかった?僕……その……こういうことは、初めて、で」

 途切れ途切れに言うカイの鼓動はまだとても大きく音を立てていて、アリアはその音をもっと聞きたくてカイの胸に頬を寄せる。

 「はい……私も、です。でも……カイ様は違うのかと、思っていました」
 「どうして……?」
 「だって……キス、が……」

 そこまで言って、アリアは自分のファーストキスの失態に身体中が熱くなった。初めてのくせに、感情に流されて勢いでぶつかってしまった。カイはきっとはしたないと思っただろう。
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