彼女人形(ホラー)‐彼氏人形続編‐
うつむいていた薫子は顔をあげ、俺を見ている。


その口元は不自然にほほ笑んでいるように見えた。


『信じられないかもしれないけれど、これが噂のすべてよ』


「ははっ……魂を奪うなんて、そんなことできるかよ」


俺は美奈の声で我に返り、そして明るい口調でそう言った。


本当は心臓がバクバクして今にも破裂してしまいそうだ。


薫子の視線が俺に突き刺さっているように感じる。


薫子にとって俺は獲物なのかもしれない。


動揺を悟られないように最後の明るい会話をしてから、美奈との電話を切った。


大きく息を吐き出して携帯電話を机に置く。


全身から力が抜けたように背もたれに体重をかけた。


なんて噂を聞いてしまったんだろう。


薫子がこれから俺を殺すつもりなのかもしれないなんて……。


チラリと薫子を見ると、またうつむいた状態に戻っていた。
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