彼女人形(ホラー)‐彼氏人形続編‐
いっそのこと2人とも全力でぶつかってきてくれれば、俺だってスッキリできるのに。


そう思っていると、気が付けば自分の家の坂道まで来ていた。


通い慣れた道をまた家まで歩く。


家にはカギがかかっていて、俺は自分でカギを開けて入った。


「ただいま」


それに対して返事はない。


重たい体を引きずるようにして階段を上がる。


自室のドアを開けると、隅に座っていた薫子がパッと顔を上げた。


「おかえり、燈里」


結音と同じ笑顔で、同じ声で出迎えてくれる。


『おかえり、燈里』


誰でも言えそうなその一言は、俺の胸の奥にジワリと入って行った。


自然と笑みがこぼれる。


ダメだ。


騙されるな。


本能的に薫子を拒絶している。
< 287 / 436 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop