彼女人形(ホラー)‐彼氏人形続編‐
薫子は途端に金切り声を上げてナイフを振り上げる。


俺は咄嗟に体勢を低くし薫子の腹部めがけて走った。


ドッと体同士がぶつかり合い、薫子が後ろ向きに倒れ込む。


俺はそのまま薫子の体に馬乗りになり、カッターを持っている方の手首を押さえつけた。


「離せ!」


俺の下でもがく薫子。


「これ以上お前の好きにはさせない」


右肩がズキズキと痛む。


こんなに暴れていちゃ血も止まらないだろう。


だけど俺は薫子を押さえつける手に力を込め続けた。


「人形は元々人間なんだってな。人形の購入者を殺し、その魂を奪って人間として蘇る。信じられない話だ。


でも……お前を見ていたら現実にあるのかもしれないって思ったよ。山下陽子」


俺はあえて大きな声で『山下陽子』と、薫子を呼んだ。


生前の記憶が少しでもあるなら、なにか反応が返ってくるかもしれない。
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