彼女人形(ホラー)‐彼氏人形続編‐
できない……。


できないできないできないできない!


俺は結音に向けている刃先を左手で握りしめた。


手のひらが切れるのを感じる。


流れ出てきた血が結音の布団に落ちて赤いシミを作った。


同時に透明なシミが広がった。


俺の涙だ。


滲む視界の中、俺はもう一度自分の方へ刃を向けた。


そしてそれを首元へと移動する。


恐怖はない。


やっぱり、死ぬのは俺なんだ。


俺1人でいいんだ。


そう思うと少し安心できた。


俺が死んだあと薫子がどう動くか、素直に俺の魂を奪って帰ってくれればいいけれど。


それだけが少し気がかりだった……。
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