君が笑うなら
「いくつに見えた?」
クスクスと笑いながら志和。やっぱり、どこか大人びてると思う。下ネタで喜ぶクラスの男子とは大違いだ。
「え、三十路」
「ひどいなぁ、もう」
菜穂は、思わずごまかすように嘘をついて、ふと時計を見た。8時。もう外も暗くなってきている。いつもなら、勉強をしている時間。
「あ、もう帰らなきゃ」
「送って行くよ」
断ろうとして、 時間を思い出す。さすがにここまで暗い時間に一人で外出は怖い。近所のコンビニならとにかく、変質者に会ったら大変だ。
普段でも、幾度かは変質者に会ったことがあった。どんな事をされたかなんて思い出す気にもなれない。